訪日タイ人向けのインバウンドメディア、訪日メディアなどを運営するクライアントから「検索項目として日本をエリア分けする時にいくつに分ければいいのか?」という質問をよくいただきます。この質問に対する回答は「それはあなたの運営するメディアの方針による」としか言えません。
エリアはざっくりと分けた方が、つまり選択肢は少ないほうがユーザーが迷わずに済みます。ただし、ざっくりと分けるとユーザーの望む検索結果にたどり着かないこともあります。このふたつはトレードオフの関係にあるため、ここに正解はありません。
また、日本の地域名も固有名詞としてタイにも浸透しており、タイ人も日本人と同じように「カンサイ」「カントー」という言い方をします。ただし、その表記方法(スペル)は公式な規定がなく、各々バラバラな表記を採用しています。
そこで、我々はGoogle内での「タイ語の日本の地域名」の検索数をもとに、「実際にタイ人が使っている(検索している)タイ語表記はどれか」ひいては「SEO的に効果的なタイ語表記はなにか」を検証していきたいと思います。
タイ語の地域別観光ガイドブックでの表記例
東北地方の観光ガイドブック
赤枠内は「トウホク」のタイ語表記です。表題はアルファベット、副題はタイ語で表記されています。
関東地方の観光ガイドブック
大きなフォントの表題は「カントー」のタイ語表記です。こちらは表題はタイ語、副題はアルファベットで表記されています。
八地方区分での日本の地域分け
日本全体を地域(エリア)分けするときは、日本国内においては「八地方区分」が多く用いられています。八地方区分とは歴史や交通機関、文化圏、経済圏などを元に日本を分類したもので、以下の8エリアに分類されます。しかし、このエリア分けがタイで一般的だとも限りません。
【1】北海道
【2】東北
【3】関東
【4】中部
【5】近畿
【6】中国
【7】四国
【8】九州
タイ語での八地方区分での日本の地域分け(Wikipedia)
タイでは日本の地域をどのように分類しているのでしょうか。まずタイ語のWikipediaを確認したところ、日本と同じ八地方区分がそのまま用いられていました。唯一の相違点として、「近畿」の部分が「関西または近畿」という表記になっていました。この表記順から見ても、タイでは「関西」の方が「近畿」よりも認知度が高そうです。
また、既に述べましたが、読みは基本的には日本語と同じです。以下は「ホッカイドー」「トーホク」などと読みます。
【1】ฮกไกโด(北海道)
【2】โทโฮะกุ(東北)
【3】คันโต(関東)
【4】ชูบุ(中部)
【5】คันไซ หรือ คินกิ(関西または近畿)
【6】ชูโงะกุ(中国)
【7】ชิโกะกุ(四国)
【8】คีวชู(九州)
タイ語での八地方区分での日本の地域分け(JNTO)
次に、JNTO(日本政府観光局)の情報を確認したところ、こちらでは10エリアに分かれています。「関西」についての説明はなく「近畿」との表記のみです。また、「北陸/信越」というエリアが加えられており、沖縄も別のエリアとして加えられています。元々の八地方区分に2エリア追加で10エリアということになっています。また、JNTOのタイ語サイトですが、タイ語の表記はなく、英語での表記となっています。
【1】HOKKAIDO
【2】TOHOKU
【3】KANTO
【4】CHUBU
【5】KINKI
【6】CHUGOKU
【7】SHIKOKU
【8】KYUSYU
【9】HOKURIKU/SHINETSU
【10】OKINAWA
JNTOのウェブサイト内を細かく見ていくと、それぞれのエリアのページがあり、そこにタイ語表記がありました。これをまとめると以下の通りです。
【1】ฮอกไกโด(北海道)
【2】โทโฮคุ(東北)
【3】คันโต(関東)
【4】ชูบุ(中部)
【5-1】คินกิ(近畿)
JNTO内にページ無し。地図では「KINKI」が採用されてましたが、「関西」でページが作られています。「大阪」の紹介ページ内に「คินกิ」のスペルがありました。
【5-2】คันไซ(関西)
【6】ชูโงะคุ(中国)
【7】ชูโงะคุ(四国)
【8】คีวชู(九州)
地図では「KYUSYU」と「OKINAWA」に分かれていましたが、二つ合わせて「KYUSYU & OKINAWA」というページが作られています。
【9-1】โฮคุริคุ (北陸)
【9-2】信越
JNTO内にページ無し。地図では「HOKURIKU/SHINETSU」とありましたが、「北陸」でページが作られています。
【10】โอกินาวะ(沖縄)
検索数の多いタイ語表記について
日本の固有名詞のタイ語が正式に規定されていないことは以前述べた通りです。ですので、「正しいタイ語表記」ではなく、「検索数の多いタイ語表記」を調べていきたいと思います。ウェブサイトによって表記がバラバラなものもあれば、統一されているものもあります。やはりタイ語には「カ行」「オ段」が複数あるため、それを含む地名がバラバラになっている傾向があります。
北海道のタイ語
キーワード | 月間検索数 | 採用されているメディア、補足 |
---|---|---|
ฮกไกโด | 90 | Wikipedia |
ฮอกไกโด | 9,900 | JNTO、Googleのサジェスト機能 |
Hokkaido | 8,100 | アルファベット表記 |
「北海道」は北海道地方としての「北海道」と、都道府県としての「北海道」が同じになるため、その分検索数が多くなっています。さすがの知名度で、タイ語表記がアルファベット表記より多くなっています。
東北のタイ語
キーワード | 月間検索数 | 採用されているメディア、補足 |
---|---|---|
โทโฮะกุ | 90 | Wikipedia |
โทโฮคุ | 390 | JNTO、Googleのサジェスト機能 |
Tohoku | 880 | アルファベット表記 |
関東のタイ語
キーワード | 月間検索数 | 採用されているメディア、補足 |
---|---|---|
คันโต | 260 | Wikipedia, JNTO |
Kanto | 880 | アルファベット表記 |
中部のタイ語
キーワード | 月間検索数 | 採用されているメディア、補足 |
---|---|---|
ชูบุ | 30 | Wikipedia, JNTO |
Chubu | 210 | アルファベット表記 |
関西のタイ語
キーワード | 月間検索数 | 採用されているメディア、補足 |
---|---|---|
คันไซ | 1,300 | Wikipedia, JNTO |
Kansai | 1,300 | アルファベット表記 |
近畿のタイ語
キーワード | 月間検索数 | 採用されているメディア、補足 |
---|---|---|
คินกิ | – | Wikipedia, JNTO |
คินคิ | – | その他 |
Kinki | 110 | アルファベット表記 |
中国のタイ語
キーワード | 月間検索数 | 採用されているメディア、補足 |
---|---|---|
ชูโงะกุ | – | Wikipedia |
ชูโงะคุ | – | JNTO |
ชูโกกุ | 90 | Googleのサジェスト機能 |
ชูโกคุ | – | その他 |
Chugoku | 320 | アルファベット表記 |
四国のタイ語
キーワード | 月間検索数 | 採用されているメディア、補足 |
---|---|---|
ชิโกะกุ | 10 | Wikipedia |
ชิโกะคุ | – | JNTO |
ชิโกกุ | 170 | Googleのサジェスト機能 |
Shikoku | 320 | アルファベット表記 |
九州のタイ語
キーワード | 月間検索数 | 採用されているメディア、補足 |
---|---|---|
คีวชู | – | Wikipedia |
คิวชู | 1,300 | JNTO, Googleのサジェスト機能 |
Kyushu | 880 | アルファベット表記 |
Kyusyu | 10 | アルファベット表記(スペルミス) |
北陸のタイ語
キーワード | 月間検索数 | 採用されているメディア、補足 |
---|---|---|
โฮะกุริกุ | – | Wikipedia |
โฮคุริคุ | – | JNTO |
โฮกุริกุ | – | Googleのサジェスト機能 |
Hokuriku | 170 | アルファベット表記 |
信越のタイ語
かなり頑張ってスペルを探しましたが、どうしても信越化学工業グループのスペルばかりが出てきてしまいました。同社はタイでも有名な日本の製造業ですが、企業名は自由にスペルを決めて登録できるため、信越のタイ語に関しては諦めました。これは、実際にウェブサイト内でエリア分けを行う際も、「信越」ではなく「北陸」を使ったほうがいいということになります。
沖縄のタイ語
キーワード | 月間検索数 | 採用されているメディア、補足 |
---|---|---|
โอะกินะวะ | 70 | Wikipedia, JNTO |
โอกินาว่า, โอกินาวะ | 6,600 | Googleのサジェスト機能 |
Okinawa | 6,600 | アルファベット表記 |
※「โอกินาว่า」と「โอกินาวะ」はGoogle AdWordsによってひとつのワードとして認識されて処理されました。
まとめ
タイ語表記だけで見ると、Googleのサジェスト機能でおすすめされるキーワードが基本的には検索数が一番多くなる傾向があります。また、タイ語表記とアルファベット表記を比較すると、タイ語表記の方が検索数が多いエリア名は「北海道」と「九州」だけです。「関西」はタイ語表記とアルファベット表記の検索数が同じで、それ以外のエリアは全てアルファベット表記の方が多くなっています。
しかし、このデータから「タイ人は英語で検索する」と早合点するのは早計です。エリア名はそもそも認知度が低く、タイ語表記が難しいためアルファベットで検索してしまっているという部分があると思います。
またの機会に、「県」の表記ではデータはどう変わるのかを検証したいと思います。
SEO的に効果的な日本の地域名のタイ語サンプル
我々の考える、タイ語表記の中で検索数の多いものだけを抜き出しました。
参考になればと思います。
日本語 | タイ語表記 | タイ語の読み方 | 月間検索数 |
---|---|---|---|
北海道 | ฮอกไกโด | ホッカイドー | 4,400 |
東北 | โทโฮคุ | トーホーク | 390 |
関東 | คันโต | カントー | 260 |
中部 | ชูบุ | チューブ | 30 |
関西 | คันไซ | カンサイ | 1,300 |
近畿 | คินกิ | キンキ(キンギに近い) | – |
中国 | ชูโกกุ | チューゴク(チューゴーグに近い) | 90 |
四国 | ชิโกกุ | シコク(シゴグに近い) | 170 |
九州 | คิวชู | キウシュー | 1,300 |
北陸 | โฮกุริกุ | ホークリク(ホグリグに近い) | – |
沖縄 | โอกินาว่า | オキナワー(オギナワーに近い) | 6,600 |