- はじめに
- 会社名を決める
- 登記住所を決める
- 資本金の額を決める
- (※1)タイにおける中小企業の定義
- (※2)資本金払込について
- タイ人株主を決める
- (※3)日本人100%でのタイにおける法人設立について
- 名義貸し(ノミニー)の現実を理解しておく
- (1)知り合いのタイ人にお願いする
- (2)会計事務所等にお願いする
- (3)日系銀行にお願いする
- (4)独立系出資サービスを利用する
- 労働許可証発給条件を理解しておく
- 会社登記をする
- 労働ビザを取得する
- 労働許可証を取得する
はじめに
この記事は一般的な日本人がタイで会社設立をし、そこからビザ、労働許可証を取得するための内容に絞っています。また「タイ人」「タイ人株主」の対になる言葉として「外国人」「外国人株主」というものがありますが、わかりやすくするため「外国人」の代わりに「日本人」という言葉を使います。
会社名を決める
日本では地域ごとに同一名称の企業名が認められていますが、タイでは、タイ全土において同じ名称の企業は一社しか登記できません。
また、会社名に「Thailand」をつける場合は決められたルールに従って命名する必要があります。
登記住所を決める
一般的なオフィスビルに入居する場合は気にする必要はありませんが、コンドミニアム内での登記は管理組合の許可が必要です。また、法人登記が不可能なレンタルオフィスのようなサービスもあるため注意が必要です。
資本金の額を決める
おすすめは500万バーツ以下(500万バーツも含む)です。理由は2つあり、ひとつは500万バーツ以下の資本金の場合は中小企業(※1)向け法人税率の軽減措置の対象となる可能性があるからです。
もうひとつの理由としては500万バーツ以下の資本金であれば、実際の資本金の払込が必要がない(※2)からです。
(※1)タイにおける中小企業の定義
従業員数 | |
製造業 | 従業員数200人以下 且つ 年間売上5億バーツ以下 |
サービス業、卸売業、小売業 | 従業員数100人以下 且つ 年間売上3億バーツ以下 |
2022年7月6日付けのタイ取引競争委員会布告においてタイにおける中小企業の定義が変更となっており、以前は従業員数、及び売上高のいずれかを満たしていればよかったものが、どちらも満たす必要があることになった。
(※2)資本金払込について
日本人の所有する株式が39%を越える場合は「タイ人所有分」の資本金の預金証明の提出が必要となりますが、実際の払込は不要です。
タイ人株主を決める
タイには外資規制があり、法人設立にはタイ人が株式の51%以上を所有する必要があります(※3)。この「タイ人株主」は自然人でも法人でも構いません。
しかし、会社の株式の半分以上を持ってもらうタイ人を会社設立前に見つけることはほぼ不可能であり、ガバナンス的にも問題があります。そのため、現実としてタイには様々な方法の名義貸しの手法があります。
(※3)日本人100%でのタイにおける法人設立について
BOI、外国人事業許可、駐在員事務所等の制度を利用してタイにおいて日本人100%での法人を設立することは可能ですが、本稿では割愛します。
名義貸し(ノミニー)の現実を理解しておく
上述の通り、タイ人パートナーをすぐに見つけることは不可能に近いため、現実にはタイ人の名義を借りて法人を設立するという行為が行われています。本件は非常にグレーな内容であり、表立って言及する企業は少ないですが、かなりの数の日系企業が何らかの形でこれを利用しているのが現実です。また、これらは「名義貸しサービス」ではなく「出資サービス」と呼ばれることが多く、取引名目は「経営コンサルティングサービス」となっていることが多いです。
名義貸しにはさまざまな手法がありますが、多くは以下です。
(1)知り合いのタイ人にお願いする
「従業員の親族」などにお願いするケースがこれに当たります。その従業員を解雇できなくなったり、退職時に株を返してもらえないことになったりするリスクがあります。
(2)会計事務所等にお願いする
月次会計の契約と引き換えにお願いすることができる会計事務所が複数あります。こちらもその会計事務所との契約の解除が難しくなるというリスクがあります。
(3)日系銀行にお願いする
タイには日系メガバンク全行が進出しており、そこにお願いすることができます。サービスを利用すること自体のリスクは一番低いですが、コストは最高値です。利用には様々な条件が必要ですが詳細説明は割愛します。
タイの法律運用が変わればこの方法も安全ではありませんが、実際のところこのサービスを使っている企業群全社に制裁を課すような運用は不可能だと思います。
(4)独立系出資サービスを利用する
上記以外にも出資サービスを行っている企業はあります。会計事務所との契約と引き換えになったりすることがなく、銀行の提供するサービスよりもコスト面のメリットがあります。その代わりに安心面では銀行に劣ると考えます。
労働許可証発給条件を理解しておく
タイで日本人が労働ビザを取得するには日本人一人に対して200万バーツの資本金 かつ 日本人一人に対して4人のタイ人の雇用が必要です。日本人を二人雇用しようと思う場合、資本金は400万バーツで登記しておく必要があります。
BOI奨励企業や駐在員事務所の場合はこのルール外となるが詳細は割愛します。
会社登記をする
必要書類を揃えて登記を行います。会社名の予約、新聞公告、発起人集めなどの作業が必要ですが、本題ではないため割愛します。
労働ビザを取得する
必要書類を揃えて労働ビザ(NON-B)を取得します。これからしばらく移住するのにNON(ノンイミグラント)とはおかしな気もしますが、ここでのイミグラントとは永住ビザ(永住権、PRビザ、パーマネントレジデンス)を意味します。
労働ビザはタイ国外で取得する必要があるため、既にタイ国内で設立作業などをしていた人は一旦国外に出る必要があります。
労働許可証を取得する
タイでは労働ビザだけでは働くことが出来ず、更に労働許可証の取得が必要です。